百人一首
【原 文】八重むぐら茂れる宿の寂しきに 人こそ見えね秋は来にけり
【上の句】八重むぐら茂れる宿の寂しきに(やへむくらしけれるやとのさひしきに)
【下の句】人こそ見えね秋は来にけり(ひとこそみえねあきはきにけり)
【決まり字】2字決まり「やへ」
超現代語訳
ここ、いつもは誰も来ないけど、秋だけはここにもちゃんと来てくれるんだよね
歌のポイント
- 誰も来ない場所にも、季節だけは巡ってくると歌った歌
- 14番目の歌人・河原左大臣(かわらのさだいじん)の廃れた豪邸を詠んだ歌
- ちょっと寂しい歌だけど、「やえ ひとこそみ」で覚える
歌の情景
この歌は、14番目の歌人・河原左大臣(かわらのさだいじん)こと源融(みなもとのとおる)の豪邸の様子を詠んだ歌です。
かつてはみんなが集まり歌で賑わった華やかな建物は、今はボロボロになってしまい誰も来ないけど、秋だけはちゃんと来てくれたと、変わり果てた景観をなんとも言えない感情でしみじみと歌いあげています。
語意
【八重むぐら】雑草で覆われている。荒れ果てた家。「八重」はいくつも重なる 「葎(むぐら)」はアカネ科のつる性の雑草
【茂れる】茂っている
【宿の】家
【人こそ見えね】人は訪ねて来ないが
【来にけり】来たんだなあ
歌の分類
【歌集】拾遺和歌集
【歌仙】-
【テーマ】秋の歌
【50音】や音
歌を詠んだ人物
【作者】恵慶法師(えぎょうほうし)
【性別】男性歌人
【職業】僧侶(現代職業:お坊さん)
【生年】不明
【享年】不明
恵慶法師(えぎょうほうし)は、平安時代中期のお坊さんで、詳しいプロフィールはわかっていません。播磨(はりま・現在の兵庫県)の国のお坊さんとして活躍し、第65代花山(かざん)天皇のお出かけのお供をした記録も残っています。
歌人としては、40番の歌人・平兼盛(たいらのかねもり)や48番の歌人・源重之(みなもとのしげゆき)らと仲良しで、人気者でした。拾遺集では、素晴らしい歌人として評価されています。