千載和歌集

3字決まり

おほけなくうきよのたみにおほふかな / 前大僧正慈円

おほけなく憂き世の民におほふかな(おほけなくうきよのたみにおほふかな) わが立つ杣にすみ染の袖(わかたつそまにすみそめのそて) 前大僧正慈円(さきのだいそうじょうじえん)
3字決まり

わかそてはしほひにみえぬおきのいしの / 二条院讃岐

わが袖は潮干に見えぬ沖の石の(わかそてはしほひにみえぬおきのいしの) 人こそ知らねかわく間もなし(ひとこそしらねかわくまもなし) 二条院讃岐(にじょういんのさぬき)
2字決まり

みせはやなをしまのあまのそてたにも / 殷富門院大輔

見せばやな雄島の海人の袖だにも(みせはやなをしまのあまのそてたにも) 濡れにぞ濡れし色は変はらず(ぬれにそぬれしいろはかはらす) 殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)
4字決まり

なにはえのあしのかりねのひとよゆゑ / 皇嘉門院別当

難波江の蘆のかりねのひとよゆゑ(なにはえのあしのかりねのひとよゆゑ) 身を尽くしてや恋ひわたるべき(みをつくしてやこひわたるへき) 皇嘉門院別当(こうかもんいんのべっとう)
3字決まり

なけけとてつきやはものをおもはする / 西行法師

嘆けとて月やはものを思はする(なけけとてつきやはものをおもはする) かこちがほなるわが涙かな(かこちかほなるわかなみたかな) 西行法師(さいぎょうほうし)
2字決まり

よもすからものおもふころはあけやらぬ / 俊恵法師

夜もすがらもの思ふころは明けやらぬ(よもすからものおもふころはあけやらぬ) ねやのひまさへつれなかりけり(ねやのひまさへつれなかりけり) 俊恵法師(しゅんえほうし)
5字決まり

よのなかよみちこそなけれおもひいる / 皇太后宮大夫俊成

世の中よ道こそなけれ思ひ入る(よのなかよみちこそなけれおもひいる) 山の奥にも鹿ぞ鳴くなる(やまのおくにもしかそなくなる) 皇太后宮大夫俊成(こうたいごうぐうのだいぶとしなり)
2字決まり

おもひわひさてもいのちはあるものを / 道因法師

思ひわびさても命はあるものを(おもひわひさてもいのちはあるものを) 憂きに堪へぬは涙なりけり(うきにたへぬはなみたなりけり) 道因法師(どういんほうし)
1字決まり

ほとときすなきつるかたをなかむれは / 後徳大寺左大臣

ほととぎす鳴きつる方をながむれば(ほとときすなきつるかたをなかむれは) ただ有明の月ぞ残れる(たたありあけのつきそのこれる) 後徳大寺左大臣(ごとくだいじのさだいじん)
3字決まり

なかからむこころもしらすくろかみの / 待賢門院堀河

ながからむ心も知らず黒髪の(なかからむこころもしらすくろかみの) 乱れてけさはものをこそ思へ(みたれてけさはものをこそおもへ) 待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ)