男性歌人

なからへはまたこのころやしのはれむ / 藤原清輔朝臣
長らへばまたこのごろやしのばれむ(なからへはまたこのころやしのはれむ)憂しと見し世ぞ今は恋しき(うしとみしよそいまはこひしき)藤原清輔朝臣(ふじわらのきよすけあそん)

あはちしまかよふちとりのなくこゑに / 源兼昌
淡路島通ふ千鳥の鳴く声に(あはちしまかよふちとりのなくこゑに)いく夜寝覚めぬ須磨の関守(いくよねさめぬすまのせきもり)源兼昌(みなもとのかねまさ)

ちきりおきしさせもかつゆをいのちにて / 藤原基俊
契りおきしさせもが露を命にて(ちきりおきしさせもかつゆをいのちにて)あはれ今年の秋もいぬめり(あはれことしのあきもいぬめり)藤原基俊(ふじわらのもととし)

うかりけるひとをはつせのやまおろしよ / 源俊頼朝臣
憂かりける人を初瀬の山おろしよ(うかりけるひとをはつせのやまおろしよ)激しかれとは祈らぬものを(はけしかれとはいのらぬものを)源俊頼朝臣(みなもとのとしよりあそん)

あけぬれはくるるものとはしりなから / 藤原道信朝臣
明けぬれば暮るるものとは知りながら(あけぬれはくるるものとはしりなから)なほ恨めしき朝ぼらけかな(なほうらめしきあさほらけかな)藤原道信朝臣(ふじわらのみちのぶあそん)

かくとたにえやはいふきのさしもくさ / 藤原実方朝臣
かくとだにえやは伊吹のさしも草(かくとたにえやはいふきのさしもくさ)さしも知らじな燃ゆる思ひを(さしもしらしなもゆるおもひを)藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)

きみかためおしからさりしいのちさへ / 藤原義孝
君がため惜しからざりし命さへ(きみかためおしからさりしいのちさへ)長くもがなと思ひけるかな(なかくもかなとおもひけるかな)藤原義孝(ふじわらのよしたか)

みかきもりゑしのたくひのよるはもえ / 大中臣能宣朝臣
御垣守衛士のたく火の夜は燃え(みかきもりゑしのたくひのよるはもえ)昼は消えつつものをこそ思へ(ひるはきえつつものをこそおもへ)大中臣能宣朝臣(おおなかとみのよしのぶ)

かせをいたみいはうつなみのおのれのみ / 源重之
風をいたみ岩打つ波のおのれのみ(かせをいたみいはうつなみのおのれのみ)くだけてものを思ふころかな(くたけてものをおもふころかな)源重之(みなもとのしげゆき)

ゆらのとをわたるふなひとかちをたえ / 曾禰好忠
由良の門を渡る舟人かぢを絶え(ゆらのとをわたるふなひとかちをたえ)ゆくへも知らぬ恋のみちかな(ゆくへもしらぬこひのみちかな)曾禰好忠(そねのよしただ)