百人一首
【原 文】今来むといひしばかりに長月の 有明の月を待ち出でつるかな
【上の句】今来むといひしばかりに長月の(いまこむといひしはかりになかつきの)
【下の句】有明の月を待ち出でつるかな(ありあけのつきをまちいてつるかな)
【決まり字】3字決まり「いまこ」
超現代語訳
すぐ来るっていうから、待ってたのに、朝になっちゃったじゃん。
私のもとに月がやってきてどーするの?
歌のポイント
- 女性の立場になって詠んだ妄想の歌
- 「いまこん あり」と覚える
- 聞いただけで、眠くなりそうな歌
歌の情景
「またすぐ来るよ」って、言ったからずっと起きて9月の長い夜を眠らずに待っていたのに、私の前に現れたのはアナタではなく月だった。という恋人を待っていた女性をイメージして詠まれました。
この歌は、二つの解釈があり、単に9月の夜に男性を待って朝を迎えた女性と、数か月の間ずっと男性を待っていて、とうとう9月になってしまったという設があります。
語意
【いま来む】いますぐに
【いひしばかりに】言ったせいで
【長月】陰暦の9月
【有明の月】夜遅くに出て、朝になっても空にうっすら見える月
【待ち出でつるかな】待っているところに出てきてしまった
歌の分類
【歌集】古今和歌集
【歌仙】三十六歌仙
【テーマ】恋の歌
【50音】い音
歌を詠んだ人物
【作者】素性法師(そせいほうし)
【性別】男性歌人
【職業】僧侶(現代職業:お坊さん)
【生年】不明
【享年】910年( 延喜10年)ごろ
素性法師は、良岑玄利(よしみねのはるとし)と言い、父は12番目の歌人・僧正遍昭です。出家する前は第56代清和(せいわ)天皇のもとで働き、順調にエリートコースを進んでいましたが、父の命令により本人の意思とは関係なく坊さんになりました。
晩年は、大和国(やまとのくに・現在の奈良県)の良因院(りょういんいん)に過ごし、皇室の歌会で活躍しました。三十六歌仙の一人です。