百人一首
【原 文】めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に 雲隠れにし夜半の月影
【上の句】めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に(めくりあひてみしやそれともわかぬまに)
【下の句】雲隠れにし夜半の月影(くもかくれにしよはのつきかけ)
【決まり字】1字決まり「め」
超現代語訳
えー!もっとゆっくり会いたかったのに!まるで、雲に隠れた月のように探せなくなっちゃった。
歌のポイント
- 世界的に有名な紫式部が詠んだ歌
- 一時決まり「め」で始まる絶対に覚えておきたい一首
- 友人を月に見立てた雅な歌
- もしかしたら名前は藤原香子(かおりこ・たかこ・こうし)かも知れない人物の歌
歌の情景
この歌は、懐かしい幼馴染の友だちが久しぶりに訪ねてきてくれたのに、ほんの少しの時間会っただけですぐに帰ってしまった様子を歌にしています。そしてまるで友だちが雲に隠れた月のように姿が見えなくなってしまったと詠んでいます。
語意
【めぐりあひて】久しぶりにあって
【見しやそれともわかぬ間に】会ったのかどうかもわからないうちに
【雲がくれにし】雲にかくれてしまった
【夜半の月影】夜中の月のように ※月影は「月かな」とも伝わっている
歌の分類
【歌集】新古今和歌集
【歌仙】-
【テーマ】雑の歌
【50音】め音
歌を詠んだ人物
【作者】紫式部(むらさきしきぶ)
【性別】女性歌人
【職業】女房(現代職業:キャリアウーマン)
【生年】970年(天禄元年)~978年(天元元年)
【享年】不明
紫式部(むらさきしきぶ)は、平安時代に大活躍した女流作家で世界的にも有名な人物です。父は文章生(もんじょうしょう)で学問を学んだ藤原為時(ふじわらのためとき)で、祖父は27番の歌人・藤原兼輔(ふじわらのかねすけ)です。
父の影響で幼い頃から学問に親しんだ文学少女でした。皇室に務める役人・藤原宣孝(ふじわらののぶたか)と結婚し、58番の歌人・大弐三位(だいにのさんみ)を生みます。幸せな生活は長く続かず、夫が病によって亡くなりました。シングルマザーとなり、この頃から「源氏物語」を書き始めました。
「源氏物語」はすぐに人気となり、その評判を聞いた藤原道長から娘である一条天皇の奥さん・藤原彰子の家庭教師のオファーがあり、彰子のもとで働き始めました。その間に「源氏物語」を完成させました。もともとは「藤式部(とうのしきぶ)」と呼ばれていましたが、源氏物語が有名になり紫の上の事を書いたことから紫式部と呼ばれるようになりました。
また近年の研究で本名は藤原香子(ふじわらのかおりこ・たかこ・こうし)と、とてもチャーミングな名前だったかも知れないとされています。勅撰集に60首収められ、源氏物語の中では、それぞれ登場するキャラクターとして詠んだおよそ800首の和歌が一緒に綴られています。