百人一首
【原 文】あらざらむこの世のほかの思ひ出に いまひとたびの逢ふこともがな
【上の句】あらざらむこの世のほかの思ひ出に(あらさらむこのよのほかのおもひてに)
【下の句】いまひとたびの逢ふこともがな(いまひとたひのあふこともかな)
【決まり字】3字決まり「あらさ」
超現代語訳
ワタシ、もうすぐ死んじゃうかも知れないから、天国に行く前にもう一度だけアナタに会いたいの
歌のポイント
- 恋の多さから藤原道長に「浮かれ女」と呼ばれた女の歌
- 自由過ぎる恋愛から紫式部に「けしからぬ人」と呼ばれた女の歌
- 病気で苦しいのに、愛しい人に会いたいと願った切実な恋の歌
歌の情景
この歌は、病気によって自分の命はもう長くないと察した作者が、最期の想いを歌に込めて愛しい恋人に詠んだとても切実で可愛らしい歌です。
天国に行っても、大好きな人との思い出に触れたいと願うピュアな乙女心が伝わってきます。
語意
【あらざらむ】生きていないだろう
【この世のほか】この世の他 死後の世界
【思ひ出に】思い出になるように
【いまひとたびの】もう一度
【逢ふこともがな】会ってほしい 「もがな」は願望の終助詞
歌の分類
【歌集】後拾遺和歌集
【歌仙】-
【テーマ】恋の歌
【50音】あ音
歌を詠んだ人物
【作者】和泉式部(いずみしきぶ)
【性別】女性歌人
【職業】女房(現代職業:キャリアウーマン)
【生年】978年(天元元年)
【享年】不明
和泉式部(いずみしきぶ)は、平安時代中期に第66代一条天皇の奥さんである藤原彰子(ふじわらのしょうし)に仕えたスーパー才女です。父は、越前(えちぜん・現在の福井県)の国の役人・大江雅致(おおえまさむね)で、橘道貞(たちばなのみちさだ)と結婚し、60番目の歌人・小式部内侍(こしきぶのないし)を生みます。
和泉式部の名前は、夫の橘道貞が和泉(現在の大阪)の国の役人だったことから、夫の仕事先の名前と父親の役職名を組み合わせたとされています。その後、恋多き和泉式部は橘道貞と離婚し、冷泉天皇の第3皇子・為尊親王(ためちかしんのう)そして第4皇子・敦道親王(あつみちしんのう)と熱愛を繰り広げました。残念なことに二人の皇子が亡くなると、今度は藤原彰子に仕え歌人としての才能を発揮しました。
摂津(せっつ・現在の大阪府)の国の役人である藤原保昌(ふじわらのやすまさ)と再婚しますが離婚し、娘の小式部内侍が自分より先に天国に旅立つなど晩年は寂しい人生だったようです。とても情熱的な女性で、歌人としての評価は後世でも高く「和泉式部日記」があります。