あまつかせくものかよひちふきとちよ / 僧正遍昭

3字決まり

百人一首

【原 文】天つ風雲の通ひ路吹きとぢよあまつかせくものかよひちふきとちよ  乙女の姿しばしとどめむをとめのすかたしはしととめむ

【上の句】天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ(あまつかせくものかよひちふきとちよ)

【下の句】乙女の姿しばしとどめむ(をとめのすかたしはしととめむ)

【決まり字】3字決まり「あまつ」

超現代語訳

お願い!待ってくれない?
美しく舞う女性たちを、もう少し観ていたいんだ。

歌のポイント

  • 幻想的でロマンティックな歌と思わせつつエロイ歌
  • 絶世の美女・小野小町に恋をしたイケメンが詠んだ歌
  • 人気の歌なので、「あまつ をと」と、覚えておきたい一首

歌の情景

この歌は、宮中で披露された舞楽「五節の舞」を観て詠んだ歌です。うっとりとするほどに美しい女性をもっと観ていたい!とありのままの欲望を表現しています。
女性を天女に例えたなんともロマンティックな感覚でピュアな印象ですが、冷静に考えると単なるエロい歌です。
※五節の舞とは、宮中の儀式で収穫に感謝を捧げる「新嘗祭」のプログラムの一つで、未婚の女性が舞を奉納します。

語意

【あまつ風】天空を吹く風
「つ」は「の」にあたる格助詞
【雲のかよひ路】雲の中を通って天と地上を結ぶ通路。天女はそこを通るとされている
【吹きとぢよ】風が吹いて天女の通り道を風が吹いて雲でふさいじゃえ!と天を吹く風にお願いしている
【をとめ】五節の舞を披露した女性たちを天女に例えている
【しばしとどめむ】しばらく地上にとどめておこう

歌の分類

【歌集】古今和歌集
【歌仙】六歌仙
【テーマ】雑の歌
【50音】あ音

歌を詠んだ人物

【作者】僧正遍昭(そうじょうへんじょう)
【性別】男性歌人
【職業】僧侶(現代職業:お坊さん)
【生年】816年(弘仁7年)
【享年】890年2月12日(寛平2年1月19日)

僧正遍昭は、平安時代前期に活躍したお坊さんで、出家する前の名前は良岑宗貞(よしみねのむねさだ)といいます。第50代桓武天皇の孫にあたり、父は大納言・良岑安世(よしみねのやすよ)で、子は21番目の歌人である素性法師(そせいほうし)です。第54代仁明天皇(にんみょうてんのう)の秘書的なお仕事をする蔵人として働き、その後は皇室のあらゆるイベントで警備をする左近衛少将で大活躍します。

この「あまつ風~」は、その皇室でのイベントに際し詠まれた歌とされています。出世し蔵人頭まで上りつめましたが、仁明天皇が亡くなるとお坊さんになり比叡山で修行をします。その後、お坊さんの中でも身分の高い僧正になり京都に元慶寺(がんけいじ)というお寺を作りました。

またプライベートでは超イケメンで有名な人物でした。出家する前は、9番目の歌人でもある絶世の美女・小野小町に恋心を抱きますが、残念ながらその恋は叶わなかったようです。天皇の孫として生まれながら出家したという生き方は、たくさんの物語になりやすく「大和物語」や「今昔物語集」、他にも小野小町との恋を描いた「百夜通いの伝説」に登場する深草少将のモデルになった人物とされています。しなやかかつリズミカルな歌を多く詠み、歌人としての評価も高く六歌仙、三十六歌仙の一人です。