百人一首
【原 文】ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは
【上の句】ちはやぶる神代も聞かず竜田川(ちはやふるかみよもきかすたつたかは)
【下の句】からくれなゐに水くくるとは(からくれなゐにみつくくるとは)
【決まり字】2字決まり「ちは」
超現代語訳
聞いたことがないよね?ミラクルが多い日本でも。
竜田川をこんなにもビューティフルな真紅に染めちゃうなんて!
歌のポイント
- 映画「ちはやふる」のタイトルになった歌
- とても美しい光景をイメージできる『さすが!業平っ』と言える見事な歌
- 絶世の美女・小野小町にも恋したイケメンチャラ男が詠んだ歌
- 「伊勢物語」のモデルとなった人物が詠んだ歌
歌の情景
この歌は、「屏風歌」といい屏風に描かれた絵に合わせて、和歌を詠んだものです。
第56代清和(せいわ)天皇の后・藤原高子(ふじわらのたかいこ)の屏風には、竜田川に紅葉が流れている絵が描かれており、その屏風をみて詠み捧げました。
平面に描かれた絵から美しくもダイナミックな景観をイメージできるとして、とても高く評価されています。また業平と藤原高子はかつての恋人同士でもありました。天皇の后となった高子に、とてもナイスな歌を詠み捧げる自分の存在を猛アピールしているチャラ男ぶりが伺えます。
語意
【ちはやふる】 勢いのはげしい様子 「神」にかかる枕詞
【神代もきかず】初代神武天皇即位から神々が治めていた時代。ミラクルが当然のように起きていた時代でさえ聞いたことがない
【たつ田川】紅葉のメジャースポットで、現在の奈良県北西部を流れる川
【からくれなゐ】鮮やか紅色
【水くくる】くくるは絞り染めの事で、川一面を真っ赤に染め上げている。主語は「たつ田川」で擬人法を使い、「とは」は、上の句の「神代も聞かず」につながる倒置法も使われている
歌の分類
【歌集】古今和歌集
【歌仙】六歌仙 三十六歌仙
【テーマ】秋の歌
【50音】ち音
歌を詠んだ人物
【作者】在原業平朝臣(ありわらのなりひらあそん)
【性別】男性歌人
【職業】官人(現代職業:官僚)
【生年】825年(天長2年)
【享年】880年7月9日(元慶4年5月28日)
在原業平朝臣は、平安時代初期の官僚・在原業平(ありわらのなりひら)です。16番目の歌人・中納言行平(ちゅうなごんゆきひら)は異母兄で、祖父は第51代平城(へいぜい)天皇、父は阿保親王(あぼしんのう)です。在原の五男だったことから、別名・在五中将とも呼ばれます。
異母兄・行平と同じように、皇族の身分で生まれながら強烈な藤原氏のせいで、イケてない官僚として日々過ごしますが、業平は超ナイスイケメンで和歌とたくさんの女性には特別なエネルギーを注ぐかのように情熱的でチャライ毎日を送りました。9番目の歌人・小野小町にも恋心を抱き、多くの女性からモテモテの日常を送る中でロマンティックな和歌が生まれました。
歌人としての才能は素晴らしく高く、六歌仙、三十六歌仙の人物の一人で、勅撰集には87首もの歌が収められています。晩年になり、ようやく天皇の側近として活躍し、56歳で生涯を閉じました。そのイケメンぶりから日本各地で業平の伝説が伝わっており、伊勢物語の主人公のモデルになったとも言われています。