百人一首
【原 文】月見ればちぢにものこそ悲しけれ わが身ひとつの秋にはあらねど
【上の句】月見ればちぢにものこそ悲しけれ(つきみれはちちにものこそかなしけれ)
【下の句】わが身ひとつの秋にはあらねど(わかみひとつのあきにはあらねと)
【決まり字】2字決まり「つき」
超現代語訳
自分だけの秋じゃないんだけどさー、
美しい月を観ていたら、たくさんの事を考えちゃって・・・なんだか悲しくなってきちゃったよ。
歌のポイント
- 考え事をしている時に詠みたい歌
- 「月」・「わが身」・「秋」よく登場するフレーズで混乱しそうになる歌
- 歌会で「秋」をテーマに詠んだ歌
歌の情景
この歌は、実際に月を眺めて詠んだ歌ではなく、歌会で「秋」をテーマに詠んだ歌です。
唐(中国)の詩人・白楽天の『燕子楼(えんしろう)』の切ない気持ちをふまえて、月に対する色んな思いを歌っています。
語意
【月見れば】月をみると
【ちぢに】たくさんの、限りなく
【物こそ悲しけれ】物ごとが悲しい
「物悲し」の間に強い意思の助詞「こそ」を挟んで、悲しけれとなった係り結びの表現
【わが身ひとつの】自分一人だけの
【秋にはあらねど】秋ではないのだけれど
歌の分類
【歌集】古今和歌集
【歌仙】-
【テーマ】秋の歌
【50音】つ音
歌を詠んだ人物
【作者】大江千里(おおえのちさと)
【性別】男性歌人
【職業】官人(現代職業:官僚)
【生年】不明
【享年】不明
大江千里(おおえのちさと)は、平安時代前期で官僚として働いていました。詳しいことはあまりよくわかっていませんが、漢学者の大江音人(おおえのおとんど)の次男として生まれ、17番の歌人・在原業平の甥にあたる人物です。また父と同じように漢学を学びましたが、漢詩の作品はあまり残されていません。勅撰集に25首入っています。