百人一首
【原 文】見せばやな雄島の海人の袖だにも 濡れにぞ濡れし色は変はらず
【上の句】見せばやな雄島の海人の袖だにも(みせはやなをしまのあまのそてたにも)
【下の句】濡れにぞ濡れし色は変はらず(ぬれにそぬれしいろはかはらす)
【決まり字】2字決まり「みせ」
超現代語訳
血の涙に濡れて、色が変わってしまった着物の袖をアナタに見せたいわ。こんなにも袖の色が変わるのは、私だけよ。
歌のポイント
- 和歌の世界では、凄い女流歌人の歌
- 血の涙を流すほど泣いた面倒な女の歌
- 「みせ ぬ」で覚える
歌の情景
この歌は、「恋の歌」をテーマに詠まれました。48番の歌人・源重之(みなもとのしげゆき)の歌に答える形で詠まれています。漢詩から来た、恋で流す血の涙を紅涙(こうるい)といい、会いに来てくれない恋人に自分がどれだけ辛い思いをしているかをアピールしているちょっと面倒な女の歌です。
語意
【見せばやな】見せたい。見てもらいたい。「ばや」は願望を表す終助詞。
【雄島のあま】「雄島」は、宮城県松島湾内にある島。「あま」は海で魚介類を獲る漁師。
【袖だにも】袖でさえも。袖でも。
【ぬれにぞぬれし】ひどくぬれて。「に」は強意の格助詞。「ぞ」は係助詞。
【色はかはらず】色は変わらない。
歌の分類
【歌集】千載和歌集
【歌仙】-
【テーマ】恋の歌
【50音】み音
歌を詠んだ人物
【作者】殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)
【性別】女性歌人
【職業】女房(現代職業:キャリアウーマン)
【生年】1130年(大治5年)頃
【享年】1200年(正治2年)頃
殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)は、平安時代末期に殷富門院こと第77代・後白河(ごしらかわ)天皇の第一皇女・亮子内親王(りょうしないしんのう)に仕えた人物で、藤原信成(ふじわらののぶなり)の娘です。
女流歌人としても有名で、85番の歌人・俊恵法師、86番の歌人・西行法師、87番の歌人・寂蓮法師、そして97番の歌人・藤原定家ともとっても仲良しで多くの歌会を開催し、和歌を盛り上げました。たくさんの歌を詠み、勅撰集には63首収められています。