百人一首
【原 文】忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな
【上の句】忘らるる身をば思はず誓ひてし(わすらるるみをはおもはすちかひてし)
【下の句】人の命の惜しくもあるかな(ひとのいのちのをしくもあるかな)
【決まり字】3字決まり「わすら」
超現代語訳
わたしの事は、もういいの。今さらね。
でも、わたしを裏切ったあなたに罰がくだって命を失わないかとても心配だわ~
ふふ
歌のポイント
- 尾上右近が詠んだ歌ではない
- 失恋の悲しみをとっくに過ぎて、元恋人・43番目の歌人・藤原敦忠(ふじわらのあつただ)にマウントしている歌
- デリケートな歌のようで、実は皮肉たっぷりな歌
- 恋多き女性が詠んだ歌
歌の情景
この歌は、失恋の悲しみを超えて自分を裏切った元恋人の命が短くならないか心配だとたっぷりの皮肉を込めて詠んだ歌です。
当時、神への誓いを破った者は神罰を受けて命が亡くなると信じられていました。43番目の歌人・藤原敦忠との恋が終わったときに詠まれたとされています。
語意
【忘らるる】あなたから忘れられる。「忘ら」は、四段活用動詞「忘る」の未然形。「るる」は受け身の助動詞「る」の連体形
【身をば】自分のこと
【思はず】思わないで
【ちかひてし】カニに誓って
【人の命】あなたの命
【をしくもあるかな】惜しまれます。「も」は、強意の係助詞。「かな」は詠嘆の終助詞
歌の分類
【歌集】拾遺和歌集
【歌仙】-
【テーマ】恋の歌
【50音】わ音
歌を詠んだ人物
【作者】右近(うこん)
【性別】女性歌人
【職業】女房(現代職業:キャリアウーマン)
【生年】不明
【享年】不明
右近(うこん)は、平安時代中期の女性歌人で、右近衛少将として活躍していた藤原季縄(ふじわらのすえただ)の娘です。父の役職から右近と呼ばれ、醍醐天皇の奥さん・皇后穏子(おんし)に仕えた人物です。
数多くの恋をした女性としても有名で、大和物語によるとこの「忘らるる~」は、43番目の歌人・藤原敦忠にフラれた時に詠んだとされています。勅撰集に9首入っていて、宮中で開催される歌のイベントにも多数参加していたようです。