百人一首
【原 文】逢ひ見てののちの心にくらぶれば 昔はものを思はざりけり
【上の句】逢ひ見てののちの心にくらぶれば(あひみてののちのこころにくらふれは)
【下の句】昔はものを思はざりけり(むかしはものをおもはさりけり)
【決まり字】2字決まり「あひ」
超現代語訳
恋人になってからさらに愛しいと思う気持ちを考えると、付き合う前の気持ちはなんて全然
歌のポイント
- 38番目の歌人・右近を見捨てた男が詠んだ歌
- 愛しい人と恋人になれて、ハッピーなのに恋しさが溢れ出している気持ちを詠んだ情熱的な歌
- 「あい む」と覚える
歌の情景
この歌は、想いを寄せる女性と恋人になりたい!とそれだけを願っていたけれど、その願いが叶った今は彼女への想いは募るばかりで、前の気持ちなんて何もなかったも同然だったと詠みあげています。
この歌は、当時の恋人、26番の歌人・貞信公(ていしんこう)の娘・藤原貴子(ふじわらのたかこ)への想いを詠んだ歌とされています。
語意
【あひみて】恋人同士になってから
【後の心】それから後の心・想い
【くらぶれば】比べてみれば
【昔】「あひみて」以前のこと
【ものを思はざりけり】恋に悩んでいなかったなあ。「けり」は過去、詠嘆の助動詞の終止形
歌の分類
【歌集】拾遺和歌集
【歌仙】三十六歌仙
【テーマ】恋の歌
【50音】あ音
歌を詠んだ人物
【作者】権中納言敦忠(ごんちゅうなごんあつただ)
【性別】男性歌人
【職業】上級官人(現代職業:エリート官僚)
【生年】906年(延喜6年)
【享年】943年4月18日(天慶6年3月7日)
権中納言敦忠(ごんちゅうなごんあつただ)は、藤原敦忠(ふじわらのあつただ)の事で、平安時代前期から中期のエリート官僚です。父は、左大臣・藤原時平(ふじわらのときひら)で、母は17番目の歌人・在原業平(ありわらのなりひら)の孫娘です。
38番目の歌人・右近(うこん)との恋も有名で、恋多きイケメンとして語られています。地方の役人など様々な役職を経て参議まで出世しましたが、菅原道真の祟りによって37歳の若さでこの世を去りました。三十六歌仙の一人で、勅撰集には30首収められています。