百人一首
【原 文】忘れじのゆく末まではかたければ 今日を限りの命ともがな
【上の句】忘れじのゆく末まではかたければ(わすれしのゆくすゑまてはかたけれは)
【下の句】今日を限りの命ともがな(けふをかきりのいのちともかな)
【決まり字】3字決まり「わすれ」
超現代語訳
「ワタシの事を忘れない」って、誓ってくれたアナタの気持ちは、いつまで続くかわからないから、幸せの気持ちのまま、今日で人生ラストの日にしておきたいわ!
歌のポイント
- 幸せの絶頂で詠んでいるのに、なんとも切なさを感じる歌
- 100人の中で、二人いる「母」の二人目
- 「母」を名乗っているが、名前は貴子(たかこ)ちゃん
- 新婚なのに、すでに夫の愛を疑っている歌
歌の情景
この歌は、結婚間もない頃、夫である藤原道隆(ふじわらのみちたか)に、「ずっと愛してる」と、言われ誰よりも幸せなのに、この幸せがいつまで続くかわからないから、今の幸せの気持ちのままに、今日で人生を終わりにしたいと詠んだ歌です。
語意
【忘れじの】忘れないと誓った約束が
【ゆく末までは】将来 この先ずっと
【難ければ】難しくてできそうにない
【今日をかぎりの】今日を最後にして
【命ともがな】命であってほしい 「もがな」は願望の終助詞
歌の分類
【歌集】新古今和歌集
【歌仙】-
【テーマ】恋の歌
【50音】わ音
歌を詠んだ人物
【作者】儀同三司母(ぎどうさんしのはは)
【性別】女性歌人
【職業】女房(現代職業:キャリアウーマン)
【生年】不明
【享年】995年6月2日(長徳元年5月2日)
儀同三司母(ぎどうさんしのはは)は、高階貴子(たかしなのたかこ)で、平安時代中期の人物です。父は、高階成忠(たかしなのなりただ)で、夫は藤原道隆(ふじわらのみちたか)で、「儀同三司」は、子・伊周(これちか)の役職名です。
当時、女性にしては珍しい漢詩文に優れた人物で、そのことからも非常に負けず嫌いな人物だったとされています。この「忘れじの」は、道隆と結婚した当初に詠まれた歌で可愛らしくも、すでに夫の愛を疑っているようにも思えます。
夫の死後は出家し、その後勢力争いに敗れた伊周がリストラされ、悲しみの中この世を去りました。