百人一首
【原 文】きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに 衣かたしきひとりかも寝む
【上の句】きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに(きりきりすなくやしもよのさむしろに)
【下の句】衣かたしきひとりかも寝む(ころもかたしきひとりかもねむ)
【決まり字】2字決まり「きり」
超現代語訳
一人寂しく寝るのかー。こおろぎが鳴いているこんな寒い日の夜に。あーあ寂しいな。
歌のポイント
- 知識もあって歌も詠めて政治も出来た人物の歌
- 超エリートでパーフェクトな人なのに、寂し過ぎる夜を過ごす歌
- 寒くて風邪ひいちゃいそうな歌
歌の情景
この歌は、冬を間近に控えた秋の季節に詠まれた歌です。きりぎりすが鳴く霜の降りた寒い夜に、恋人にも会わずにボクは寝るのだろうか?と寂しい気持ちを詠みあげています。体を温めることが出来ない敷物の上で寝ることからもより一層の寒さと寂しさが募ってきます。
語意
【きりぎりす】こおろぎのこと。寒さを知らせる虫。
【鳴くや】鳴いている。「や」は、詠嘆の助詞。
【霜夜】寒く霜ののおりた夜。
【さむしろ】”むしろ”のこと。わらで編んだ粗末な敷物。「さ」は接頭語で、「寒し」と掛詞。
【衣かたしき】ひとりで寝ること。
【ひとりかも寝む】一人で寝るのだろうか。「か」は疑問、「も」は詠嘆の係助詞、「む」推量の助動詞の連体形。
歌の分類
【歌集】新古今和歌集
【歌仙】-
【テーマ】秋の歌
【50音】き音
歌を詠んだ人物
【作者】後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん)
【性別】男性歌人
【職業】公卿(現代職業:政府役人)
【生年】1169年(嘉応元年)
【享年】1206年4月16日(元久3年3月7日)
後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん)は、藤原良経(ふじわらのよしつね)こと九条良経(くじょうよしつね)で、平安時代末期から鎌倉時代初期を生きた人物です。76番の歌人・藤原忠通の孫にあたり、95番の歌人・前大僧正慈円は叔父にあたります。
父は関白で九条家初代当主の兼実(かねざね)です。良経は次男でしたが、兄・良通(よしみち)が22歳の若さで急死したために、跡継ぎとなり九条家の2代目当主となっています。
華々しいエリート一家に生まれ、和歌の他にも書道や漢詩などたくさんの教養を持っていました。
和歌を極めるために83番の歌人・藤原俊成(ふじわらのとしなり)・97番の歌人・藤原定家(ふじわらのさだいえ)親子に教えてもらい、第82代・後鳥羽(ごとば)天皇のお気に入りの歌人となります。
仕事は、順調に出世コースに乗り、内大臣のポジションをゲットしましたが、父の失脚により父とともに仕事をクビになってしまいました。それから4年後、後鳥羽天皇からのオファーを受けて再び政界に返り咲き摂政、そして太政大臣になりました。
しかし、38歳の若さでこの世を去ってしまいます。真相はわかりませんが、何者かの手によって暗殺されてしまったとも言われています。勅撰集に313首も収められている実力派歌人の一人です。