歌集

2字決まり

しのふれといろにいてにけりわかこひは / 平兼盛

忍ぶれど色に出でにけりわが恋は(しのふれといろにいてにけりわかこひは) ものや思ふと人の問ふまで(ものやおもふとひとのとふまて) 平兼盛(たいらのかねもり)
3字決まり

あさちふのをののしのはらしのふれと / 参議等

浅茅生の小野の篠原忍ぶれど(あさちふのをののしのはらしのふれと) あまりてなどか人の恋しき(あまりてなとかひとのこひしき) 参議等(さんぎひとし)
3字決まり

わすらるるみをはおもはすちかひてし / 右近

忘らるる身をば思はず誓ひてし(わすらるるみをはおもはすちかひてし) 人の命の惜しくもあるかな(ひとのいのちのをしくもあるかな) 右近(うこん)
2字決まり

しらつゆにかせのふきしくあきののは / 文屋朝康

白露に風の吹きしく秋の野は(しらつゆにかせのふきしくあきののは) つらぬきとめぬ玉ぞ散りける(つらぬきとめぬたまそちりける) 文屋朝康(ふんやのあさやす)
2字決まり

なつのよはまたよひなからあけぬるを / 清原深養父

夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを(なつのよはまたよひなからあけぬるを) 雲のいずこに月宿るらむ(くものいつこにつきやとるらむ) 清原深養父(きよはらのふかやぶ)
3字決まり

ひとはいさこころもしらすふるさとは / 紀貫之

人はいさ心も知らずふるさとは(ひとはいさこころもしらすふるさとは) 花ぞ昔の香に匂ひける(はなそむかしのかににほひける) 紀貫之(きのつらゆき)
2字決まり

たれをかもしるひとにせむたかさこの / 藤原興風

誰をかも知る人にせむ高砂の(たれをかもしるひとにせむたかさこの) 松も昔の友ならなくに(まつもむかしのともならなくに) 藤原興風(ふじわらのおきかぜ)
2字決まり

ひさかたのひかりのとけきはるのひに / 紀友則

ひさかたの光のどけき春の日に(ひさかたのひかりのとけきはるのひに) しづ心なく花の散るらむ(しつこころなくはなのちるらむ) 紀友則(きのとものり)
3字決まり

やまかはにかせのかけたるしからみは / 春道列樹

山川に風のかけたるしがらみは(やまかはにかせのかけたるしからみは) 流れもあへぬ紅葉なりけり(なかれもあへぬもみちなりけり) 春道列樹(はるみちのつらき)
6字決まり

あさほらけありあけのつきとみるまてに / 坂上是則

朝ぼらけ有明の月と見るまでに(あさほらけありあけのつきとみるまてに) 吉野の里に降れる白雪(よしののさとにふれるしらゆき) 坂上是則(さかのうえのこれのり)