拾遺和歌集

3字決まり

なけきつつひとりぬるよのあくるまは / 右大将道綱母

嘆きつつひとり寝る夜の明くる間は(なけきつつひとりぬるよのあくるまは)いかに久しきものとかは知る(いかにひさしきものとかはしる)右大将道綱母(うだいしょうみちつなのはは)
2字決まり

やへむくらしけれるやとのさひしきに / 恵慶法師

八重むぐら茂れる宿の寂しきに(やへむくらしけれるやとのさひしきに)人こそ見えね秋は来にけり(ひとこそみえねあきはきにけり)恵慶法師(えぎょうほうし)
3字決まり

あはれともいふへきひとはおもほえて / 謙徳公

あはれともいふべき人は思ほえで(あはれともいふへきひとはおもほえて)身のいたずらになりぬべきかな(みのいたつらになりぬへきかな)謙徳公(けんとくこう)
3字決まり

あふことのたえてしなくはなかなかに / 中納言朝忠

逢ふことの絶えてしなくはなかなかに(あふことのたえてしなくはなかなかに)人をも身をも恨みざらまし(ひとをもみをもうらみさらまし)中納言朝忠(ちゅうなごんあさただ)
2字決まり

あひみてののちのこころにくらふれは / 権中納言敦忠

逢ひ見てののちの心にくらぶれば(あひみてののちのこころにくらふれは)昔はものを思はざりけり(むかしはものをおもはさりけり)権中納言敦忠(ごんちゅうなごんあつただ)
2字決まり

こひすてふわかなはまたきたちにけり / 壬生忠見

恋すてふわが名はまだき立ちにけり(こひすてふわかなはまたきたちにけり)人知れずこそ思ひそめしか(ひとしれすこそおもひそめしか)壬生忠見(みぶのただみ)
2字決まり

しのふれといろにいてにけりわかこひは / 平兼盛

忍ぶれど色に出でにけりわが恋は(しのふれといろにいてにけりわかこひは)ものや思ふと人の問ふまで(ものやおもふとひとのとふまて)平兼盛(たいらのかねもり)
3字決まり

わすらるるみをはおもはすちかひてし / 右近

忘らるる身をば思はず誓ひてし(わすらるるみをはおもはすちかひてし)人の命の惜しくもあるかな(ひとのいのちのをしくもあるかな)右近(うこん)
2字決まり

をくらやまみねのもみちはこころあらは / 貞信公

小倉山峰の紅葉葉心あらば(をくらやまみねのもみちはこころあらは)いまひとたびのみゆき待たなむ(いまひとたひのみゆきまたなむ)貞信公(ていしんこう)
2字決まり

わひぬれはいまはたおなしなにはなる / 元良親王

わびぬれば今はたおなじ難波なる(わひぬれはいまはたおなしなにはなる)みをつくしても逢はむとぞ思ふ(みをつくしてもあはむとそおもふ)元良親王(もとよししんのう)