百人一首
【原 文】これやこの行くも帰るも別れては 知るも知らぬもあふ坂の関
【上の句】これやこの行くも帰るも別れては(これやこのゆくもかへるもわかれては)
【下の句】知るも知らぬもあふ坂の関(しるもしらぬもあふさかのせき)
【決まり字】2字決まり「これ」
超現代語訳
ここ!ここぉ~!ここだよ。逢坂の関って。
いろんな人が行って帰ってを繰り返す場所。
いってらっしゃーい!、お帰り〜!
歌のポイント
- 妖怪ウォッチのキャラではない
- 坊主めくりでは、蝉丸ルールなるものがある
- ヒューマニストの歌
- 「これやこの」「行くも帰るも」「知るも知らぬも」とリズミカルだけど人生を物語ったような地味な歌
歌の情景
蝉丸は、逢坂の関の近くに住んで行き交う人々を人間ウォッチングして詠んだ歌です。
毎日、毎日、出会っては別れを繰り返す人々にそれぞれの儚い人生があり、喜びや悲しみをギュギュっと詰め込んで、ポップなリズムで歌い上げています。
語意
【これやこの】これが噂にきく・有名な。「や」は詠嘆の助詞。逢坂の関にかかっている。
【行くも帰るも】都を離れて行く人も都に戻って来る人も
【別れては】「ては」は繰り返しを表す。別れては会い、また会っては別れるを繰り返している
【知るも知らぬも】知っている人も知らない人も
【逢坂の関】近江国(現在の滋賀県)と山城国(現在の京都府)の境にあった関所の名前。その昔、交通のポイント地点で検問や税金を徴収した場所
歌の分類
【歌集】後撰和歌集
【歌仙】-
【テーマ】雑の歌
【50音】こ音
歌を詠んだ人物
【作者】蝉丸(せみまる)
【性別】男性歌人
【職業】官人(現代職業:官僚)
【生年】不明
【享年】不明
蝉丸も生没年不明の謎人物の一人です。平安時代の前半に生きていたと思われます。
盲目の琵琶奏者で逢坂山に住んでいたという説がありますが、その正体は、第59代宇多(うだ)天皇の皇子敦実(あつみ)親王の元で働いた官僚説、第58代光孝(こうこう)天皇の皇子説はたまた第54代仁明(にんみょう)天皇の第4皇子・人康親王(さねやすしんのう)説もあります。
また日本の伝統芸能である能には、逢坂山を舞台とした「蝉丸」という演目があり、盲目の皇子「蝉丸」が悲しみにくれて琵琶を弾いていると、そこに生まれながらにいつも逆立ったヘアスタイルでストレスをいっぱい抱えた姉「逆髪」が現れ、お互いの運命を悲しみなぐさめ合うという人気の物語があります。