恋の歌

2字決まり

しのふれといろにいてにけりわかこひは / 平兼盛

忍ぶれど色に出でにけりわが恋は(しのふれといろにいてにけりわかこひは) ものや思ふと人の問ふまで(ものやおもふとひとのとふまて) 平兼盛(たいらのかねもり)
3字決まり

あさちふのをののしのはらしのふれと / 参議等

浅茅生の小野の篠原忍ぶれど(あさちふのをののしのはらしのふれと) あまりてなどか人の恋しき(あまりてなとかひとのこひしき) 参議等(さんぎひとし)
3字決まり

わすらるるみをはおもはすちかひてし / 右近

忘らるる身をば思はず誓ひてし(わすらるるみをはおもはすちかひてし) 人の命の惜しくもあるかな(ひとのいのちのをしくもあるかな) 右近(うこん)
3字決まり

やまかはにかせのかけたるしからみは / 春道列樹

山川に風のかけたるしがらみは(やまかはにかせのかけたるしからみは) 流れもあへぬ紅葉なりけり(なかれもあへぬもみちなりけり) 春道列樹(はるみちのつらき)
3字決まり

みかのはらわきてなかるるいつみかは / 中納言兼輔

みかの原わきて流るるいづみ川(みかのはらわきてなかるるいつみかは) いつ見きとてか恋しかるらむ(いつみきとてかこひしかるらむ) 中納言兼輔(ちゅうなごんかねすけ)
3字決まり

なにしおははあふさかやまのさねかつら / 三条右大臣

名にし負はば逢う坂山のさねかずら(なにしおははあふさかやまのさねかつら) 人に知られで来るよしもがな(ひとにしられてくるよしもかな) 三条右大臣(さんじょうのうだいじん)
3字決まり

いまこむといひしはかりになかつきの / 素性法師

今来むといひしばかりに長月の(いまこむといひしはかりになかつきの) 有明の月を待ち出でつるかな(ありあけのつきをまちいてつるかな) 素性法師(そせいほうし)
2字決まり

わひぬれはいまはたおなしなにはなる / 元良親王

わびぬれば今はたおなじ難波なる(わひぬれはいまはたおなしなにはなる) みをつくしても逢はむとぞ思ふ(みをつくしてもあはむとそおもふ) 元良親王(もとよししんのう)
4字決まり

なにはかたみしかきあしのふしのまも / 伊勢

難波潟短き蘆のふしの間も(なにはかたみしかきあしのふしのまも) 逢はでこの世を過ぐしてよとや(あはてこのよをすくしてよとや) 伊勢(いせ)
1字決まり

すみのえのきしによるなみよるさへや / 藤原敏行朝臣

住の江の岸に寄る波よるさへや(すみのえのきしによるなみよるさへや) 夢の通ひ路人目よくらむ(ゆめのかよひちひとめよくらむ) 藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)