百人一首
【原 文】恋すてふわが名はまだき立ちにけり 人知れずこそ思ひそめしか
【上の句】恋すてふわが名はまだき立ちにけり(こひすてふわかなはまたきたちにけり)
【下の句】人知れずこそ思ひそめしか(ひとしれすこそおもひそめしか)
【決まり字】2字決まり「こひ」
超現代語訳
えっ!?どうしてみんな知っているの?
ワタシの恋は、誰にも内緒のハズなのに。どうしよう。
歌のポイント
- 歌会で「忍ぶ恋」をテーマに読み上げた歌
- 40番の歌人・平兼盛に負けてとんでもない挫折を味わってしまった歌
- ピュアな恋心を詠んだ歌
歌の情景
この歌は、ピュアな初恋の気持ちを初々しく詠みあげた歌で、第62代・村上天皇主催の「天徳内裏歌合(てんとくだいりうたあわせ)」で「忍ぶ恋」をテーマにして詠まれた歌です。
誰にも知られないように、秘密にしていたはずの恋を世間に知られてしまい戸惑っている様子を歌いあげています。
語意
【恋すてふ】恋してる
【わが名はまだき】「名」は世間の噂や評判 私の噂がもう
【立ちにけり】噂がたってしまった 「けり」は詠嘆の助動詞
【人知れずこそ】人に知られないように
【思ひそめしか】思いはじめていたのに
歌の分類
【歌集】拾遺和歌集
【歌仙】三十六歌仙
【テーマ】恋の歌
【50音】こ音
歌を詠んだ人物
【作者】壬生忠見(みぶのただみ)
【性別】男性歌人
【職業】官人(現代職業:官僚)
【生年】不明
【享年】不明
壬生忠見(みぶのただみ)は、平安時代中期の官僚で、30番目の歌人・壬生忠岑(みぶのただみね)の子供です。皇居で食事の準備をする御厨子所(みずしどころ)で働き、その後は摂津(現在の大阪)の国、そして伊予(現在の愛媛県)の国で役人として活躍しました。
そんなある日、第62代・村上天皇主催の「天徳内裏歌合(てんとくだいりうたあわせ)」に参加し、この「恋すてふ~」を詠んだ際に、平兼盛に負けてしまうという苦い経験をしてしまったのです。それから、ショックで病になりやがてこの世を去ったと伝えられています。