百人一首
【原 文】滝の音は絶えて久しくなりぬれど 名こそ流れてなほ聞こえけれ
【上の句】滝の音は絶えて久しくなりぬれど(たきのおとはたえてひさしくなりぬれと)
【下の句】名こそ流れてなほ聞こえけれ(なこそなかれてなほきこえけれ)
【決まり字】2字決まり「たき」
超現代語訳
ここの滝、ずいぶん前から流れていないけど、最高にいい音だったってことは今も語り継がれているんだよね。
歌のポイント
- タ行とナ行のリズムで覚える
- 歌はなんとも地味だけど、名前の響きが美味しそう
- 漢詩・和歌・管弦が完璧な三周の才と呼ばれた男が詠んだ歌
- 命には限りがあるけれど、名声だけはずっと残るよと教えてくれている歌
歌の情景
この歌は、大覚寺の庭にある涸れた滝を前に詠んだ歌です。
大覚寺は、第52代嵯峨(さが)天皇の別荘だった場所で、当時を偲びながら今となっては荒れた庭に切なさと滝の名高さに親しみを込めて詠みあげています。
語意
【滝の音】滝の流れ落ちる音
【絶えて久しくなりぬれど】音が聞こえなくなってから、長い年月が経ってしまったけれど
【名こそ流れて】評判だけは世に語り継がれていて
【なほ聞こえけれ】やっぱり有名なことだ。「なほ」は副詞 「けれ」は詠嘆の助動詞 「けり」の已然形で、「こそ」と係り結び
歌の分類
【歌集】千載和歌集
【歌仙】-
【テーマ】雑の歌
【50音】た音
歌を詠んだ人物
【作者】大納言公任(だいなごんきんとう)
【性別】男性歌人
【職業】上級官人(現代職業:エリート官僚)
【生年】966年(康保3年)
【享年】1041年2月4日(長久2年1月1日)
大納言公任は、藤原公任(ふじわらのきんとう)で、平安時代中期に活躍した人物です。祖父・実頼(さねより)、父・頼忠(よりただ)ともに関白・太政大臣、そして母は醍醐天皇の孫という平安のエリート一家に生まれます。
公任自身も、漢詩・和歌・管弦のスペシャリストとして三周の才と呼ばれ、「和漢朗詠集(わかんろうえいしゅう)」を作ったことでも有名です。エリート職の大納言まで出世を果たしましたが、二人の娘が亡くなり大きなショックを受け、出家しました。勅撰集に92首収められています。