百人一首
【原 文】音に聞く高師の浜のあだ波は かけじや袖のぬれもこそすれ
【上の句】音に聞く高師の浜のあだ波は(おとにきくたかしのはまのあたなみは)
【下の句】かけじや袖のぬれもこそすれ(かけしやそてのぬれもこそすれ)
【決まり字】2字決まり「おと」
超現代語訳
あなたはプレイボーイって有名だから、どんなにお誘いを受けても無理ですわ。だってワタシすぐにフラれてしまいそうだから。
歌のポイント
- 70歳で、ラブレターをテーマに29歳の男性相手に詠んだ歌
- フラれる事を前提に詠んだ歌
- 「おと かけ」で、覚える
歌の情景
この歌は、第73代・堀河(ほりかわ)天皇がひらいた歌会で男性が愛を捧げ女性が返す「ラブレター」をテーマに詠まれました。この時70歳の祐子内親王家紀伊とペアになった男性はなんと29歳の藤原俊忠(ふじわらのとしただ)です。俊忠は、「人知れぬ 思ひありその 浦風に 波のよるこそ いかまほしけれ」(みんなに内緒だけど、あなたへ恋心を抱いているから、波が打ち寄せるように、夜会いにいきます)と、詠み、そこで、お返しに詠んだのが「音に聞く~」です。
語意
【音にきく】有名な。うわさに高い。
【高師の浜】歌枕。大阪府堺市付近の海岸。
【あだ波】いたずらにうち寄せて返す波。言葉巧みに女性に言い寄る浮気心を例えている。
【かけじや】かけますまい。「波」と「思い」のかけの掛詞。
【袖の濡れもこそすれ】袖が涙で濡れてしまうから。「濡れ」は波の縁語。波がかかって濡れると涙で濡れるの意味。
歌の分類
【歌集】金葉和歌集
【歌仙】-
【テーマ】恋の歌
【50音】お音
歌を詠んだ人物
【作者】祐子内親王家紀伊(ゆうしないしんのうけのきい)
【性別】女性歌人
【職業】女房(現代職業:キャリアウーマン)
【生年】不明
【享年】不明
祐子内親王家紀伊(ゆうしないしんのうけのき)は、平安時代後期の人物で、第69代・後朱雀(ぞすざく)天皇の第一皇女・祐子内親王(ゆうしないしんのう)に仕えた人物です。
父は平経方(たいらのつねかた)で、紀伊守(きいのかみ・現在の和歌山県の役人)・藤原重経(ふじわらのしげつね)は夫とも兄とも言われていますが、詳しくはわかっていません。
優れた歌人として多くの歌会にも参加し、勅撰集に29首収められています。