おくやまにもみちふみわけなくしかの / 猿丸大夫

2字決まり

百人一首

【原 文】奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿のおくやまにもみちふみわけなくしかの  声聞く時ぞ秋は悲しきこゑきくときそあきはかなしき

【上の句】奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の(おくやまにもみちふみわけなくしかの)

【下の句】声聞く時ぞ秋は悲しき(こゑきくときそあきはかなしき)

【決まり字】2字決まり「おく」

超現代語訳

秋だよ。秋。鹿の声、悲しくない?
だってさー、きれいに紅葉で染まった落ち葉を踏みながら、メス鹿に会えないオス鹿が叫ぶ恋の季節なんだよね。早く運命のメス鹿に会えると良いよね。

歌のポイント

  • 名前が猿丸でとってもユニーク!しかも伝説上の人物
  • オス鹿のように、素直に寂しいと言えない自分のもどかしさに悲しみを感じだ歌
  • 猿with鹿

歌の情景

鹿が繁殖のために恋をする秋のひっそりとした山奥。紅葉で色とりどりに染まった鮮やかな落ち葉の上を、オスの鹿がメスの鹿を探している様子です。
大自然の美しい景観の中にいるだけで本当は幸せなのに、メス鹿を求めてストレートに寂しさを表現しているぼっちのオス鹿の声を聞くと切なくも悲しくなる様子を歌っています。
猿丸大夫も、秋は人が恋しく寂しいと感じていながらも、鹿のように素直に気持ちを表現できないもどかしさを悲しみと歌ったのかもしれません。
また、この歌は、猿丸大夫がどこにいるのか?紅葉を踏み分けたのは、猿丸なのか鹿なのかと何度も何度もバトルが繰り広げられた歌でもあります。が、現代では、猿丸大夫は「奥山にいる鹿が紅葉の葉を踏みながら鳴く声」を山から離れた場所で聞いていたとされています。

語意

【奥山】山奥の人が住んでいない場所、深山。
対義語は人が住んでる場所に近い「外山(とやま)」・「端山(はやま)」
【紅葉】秋に紅葉(こうよう)した葉っぱ
【ふみわけ】複合動詞で、草木など生い茂った場所を1歩ずつ前にかきわけて進む様子(※ここでは鹿)
【声聞くときぞ秋は悲しき】
「ぞ」は強調された係助詞で、「悲し」の連体形「悲しき」で終わる係り結び。
「は」、同じく係助詞で、特に秋は悲しい季節という意味を強調している

歌の分類

【歌集】古今和歌集
【歌仙】三十六歌仙
【テーマ】秋の歌
【50音】お音

歌を詠んだ人物

【作者】猿丸大夫(さるまるだゆう)
【性別】男性歌人
【職業】官人(現代職業:官僚)
【生年】不明
【享年】不明

猿丸大夫は、百人一首の100人の中で謎めいた不思議な人物の一人で、最初に登場する謎人物です。百人一首の歌人、そして三十六歌仙の歌人でありながら、生まれた年と亡くなった年さえもわかっていません。名前の猿丸大夫の大夫は、エリート役人の証ですが、その存在さえも疑わしく伝説上の人物とされています。

ですが、第43代元明(げんめい)天皇が即位していたの707年から715年頃、または第57代陽成(ようぜい)天皇、第58代光孝(こうこう)天皇が即位していた877年から885年頃にいた人物、そして聖徳太子の孫である弓削王とも、お坊さんの道鏡ともさまざまな説があります。古今和歌集や万葉集では、詠み人知らずの歌として収録されていますが、百人一首では猿丸大夫の歌となっています。