百人一首
【原 文】長らへばまたこのごろやしのばれむ 憂しと見し世ぞ今は恋しき
【上の句】長らへばまたこのごろやしのばれむ(なからへはまたこのころやしのはれむ)
【下の句】憂しと見し世ぞ今は恋しき(うしとみしよそいまはこひしき)
【決まり字】3字決まり「なから」
超現代語訳
未来の自分は、今の自分を懐かしくそして恋しく思ってくれるよね。だって、今は昔の自分が懐かしいし、恋しいから。
歌のポイント
- 中島みゆきの「時代」っぽい、しみじみと歌
- 父親との不仲が原因でなかなか出世できなかった人物の歌
- 「ながら うし」と覚える
歌の情景
この歌は、全ての辛く悲しい思い出も時が経てば、良い思い出になるよ、と自分自身にエールを送っている歌です。父親との不仲から思うように出世できなかったことや、時代の流れによって武士たちがパワーを持ち始めたことを歌に詠みあげています。
語意
【ながらへば】もしも長生きできたなら。
【またこのごろや】もう一度現在のことを。
【しのばれむ】なつかしく思われることであろう。
【憂しと見し世ぞ】辛いと思った頃が。「憂し」はつらい。「見し」の「し」は、回想する助動詞の連体形。「世」はこの世。「ぞ」は強意の係助詞。
【今は恋しき】今は懐かしく恋しい。「恋しき」は「恋し」の連体形。
歌の分類
【歌集】新古今和歌集
【歌仙】-
【テーマ】雑の歌
【50音】な音
歌を詠んだ人物
【作者】藤原清輔朝臣(ふじわらのきよすけあそん)
【性別】男性歌人
【職業】官人(現代職業:官僚)
【生年】1104年(長治元年)
【享年】1177年7月17日(治承元年6月20日)
藤原清輔朝臣(ふじわらのきよすけあそん)は、平安時代末期を生きた人物です。父は79番の歌人・藤原顕輔(ふじわらのあきすけ)です。
父・顕輔が、第75代・崇徳(すとく)天皇より「詞花和歌集(しかわかしゅう)」を作るように命じられ一緒に取り組みますが、清輔が選んだ歌はまったくと言っていいほどに採用してもらえずに、寂しい思いをします。その後、第78代・二条(にじょう)天皇に、「続詞花和歌集(しょくしかわかしゅう)」の作成を命じられますが、完成を前に二条天皇がお亡くなりになってしまったので、勅撰集にはなりませんでした。
晩年になると歌人として評価され、「袋草紙」「奥義抄」「和歌一字抄」などを残しています。勅撰集に89首収められています。