百人一首
【原 文】風そよぐ楢の小川の夕暮は 御禊ぞ夏のしるしなりける
【上の句】風そよぐ楢の小川の夕暮は(かせそよくならのをかはのゆふくれは)
【下の句】御禊ぞ夏のしるしなりける(みそきそなつのしるしなりける)
【決まり字】3字決まり「かせそ」
超現代語訳
風が涼しいけど、まだ夏なんだよね。だって、今日は6月ラストだもん!
歌のポイント
- 数少ない夏の歌
- 詠むだけで涼しく爽やかな気分になれそうな歌
- 「かぜそ みそ」と覚える
- 定家とはライバルで大親友だった人物
歌の情景
この歌は、第86代・後堀河(ごほりかわ)天皇の奥さん・九条竴子(くじょうしゅんし)のための屏風のために詠まれた屏風歌です。屏風には季節の風物詩である神事・六月祓(みなづきばらえ)が描かれており、涼しい風から秋の気配を感じるけれど、六月祓が開催されているからまだ夏なんだ、と秋の爽やかさと神事の清らかさをマッチングさせて詠みあげています。旧暦では、4月の卯月(うづき)・5月の皐月(さつき)・6月の水無月(みなづき)が夏でした。
語意
【風そよぐ】風がそよそよと吹く。
【ならの小川】京都・上賀茂神社の近くを流れる御手洗川の別名。「楢(なら)」の葉のそよぐのをかけている。
【みそぎぞ】ここでは、神事・六月(水無月)祓の事。「ぞ」は強意の係助詞。
【しるしなりける】しるしである。「しるし」は証拠。「ける」は詠嘆の助動詞。
歌の分類
【歌集】新勅撰和歌集
【歌仙】-
【テーマ】夏の歌
【50音】か音
歌を詠んだ人物
【作者】従二位家隆(じゅにいいえたか)
【性別】男性歌人
【職業】上級官人(現代職業:エリート官僚)
【生年】1158年(保元3年)
【享年】1237年5月5日(嘉禎3年4月9日)
従二位家隆(じゅにいいえたか)は、藤原家隆(ふじわらのいえたか)の事で、鎌倉時代初期の人物です。父・藤原光隆(ふじわらのみつたか)の4男として生まれ、阿波国(あわのくに・現在の徳島県)や越中国(えっちゅうのくに・現在の富山県)の役人として活躍しました。
87番の歌人・寂蓮(じゃくれん)法師の養子となり、83番の歌人・藤原俊成に歌を学びました。後鳥羽上皇が島流しにされても、和歌を送り合うなど出世にはあまり興味がなく和歌に情熱を傾けました。97番の歌人で、百人一首の撰者となった藤原定家(ふじわらのさだいえ)と並び時代と代表する歌人となります。
晩年になっても和歌への情熱は冷め切らず、生涯で詠みあげた歌は6万首とも言われています。病をきっかけに出家し、その後まもなくこの世を去りました。