女性歌人
わかそてはしほひにみえぬおきのいしの / 二条院讃岐
わが袖は潮干に見えぬ沖の石の(わかそてはしほひにみえぬおきのいしの)
人こそ知らねかわく間もなし(ひとこそしらねかわくまもなし)
二条院讃岐(にじょういんのさぬき)
みせはやなをしまのあまのそてたにも / 殷富門院大輔
見せばやな雄島の海人の袖だにも(みせはやなをしまのあまのそてたにも)
濡れにぞ濡れし色は変はらず(ぬれにそぬれしいろはかはらす)
殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)
なにはえのあしのかりねのひとよゆゑ / 皇嘉門院別当
難波江の蘆のかりねのひとよゆゑ(なにはえのあしのかりねのひとよゆゑ)
身を尽くしてや恋ひわたるべき(みをつくしてやこひわたるへき)
皇嘉門院別当(こうかもんいんのべっとう)
なかからむこころもしらすくろかみの / 待賢門院堀河
ながからむ心も知らず黒髪の(なかからむこころもしらすくろかみの)
乱れてけさはものをこそ思へ(みたれてけさはものをこそおもへ)
待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ)
おとにきくたかしのはまのあたなみは / 祐子内親王家紀伊
音に聞く高師の浜のあだ波は(おとにきくたかしのはまのあたなみは)
かけじや袖のぬれもこそすれ(かけしやそてのぬれもこそすれ)
祐子内親王家紀伊(ゆうしないしんのうけのきい)
はるのよのゆめはかりなるたまくらに / 周防内侍
春の夜の夢ばかりなる手枕に(はるのよのゆめはかりなるたまくらに)
かひなく立たむ名こそをしけれ(かひなくたたむなこそをしけれ)
周防内侍(すおうのないし)
うらみわひほさぬそてたにあるものを / 相模
恨みわび干さぬ袖だにあるものを(うらみわひほさぬそてたにあるものを)
恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ(こひにくちなむなこそをしけれ)
相模(さがみ)
よをこめてとりのそらねははかるとも / 清少納言
夜をこめて鳥のそら音ははかるとも(よをこめてとりのそらねははかるとも)
よに逢坂の関は許さじ(よにあふさかのせきはゆるさし)
清少納言(せいしょうなごん)
いにしへのならのみやこのやへさくら / 伊勢大輔
いにしへの奈良の都の八重桜(いにしへのならのみやこのやへさくら)
けふ九重に匂ひぬるかな(けふここのへににほひぬるかな)
伊勢大輔(いせのたいふ)
おほえやまいくののみちのとほけれは / 小式部内侍
大江山いく野の道の遠ければ(おほえやまいくののみちのとほけれは)
まだふみも見ず天の橋立(またふみもみすあまのはしたて)
小式部内侍(こしきぶのないし)