雑の歌

2字決まり

もろともにあはれとおもへやまさくら / 前大僧正行尊

もろともにあはれと思え山桜(もろともにあはれとおもへやまさくら) 花よりほかに知る人もなし(はなよりほかにしるひともなし) 前大僧正行尊(さきのだいそうじょうぎょうそん)
2字決まり

よをこめてとりのそらねははかるとも / 清少納言

夜をこめて鳥のそら音ははかるとも(よをこめてとりのそらねははかるとも) よに逢坂の関は許さじ(よにあふさかのせきはゆるさし) 清少納言(せいしょうなごん)
3字決まり

おほえやまいくののみちのとほけれは / 小式部内侍

大江山いく野の道の遠ければ(おほえやまいくののみちのとほけれは) まだふみも見ず天の橋立(またふみもみすあまのはしたて) 小式部内侍(こしきぶのないし)
1字決まり

めくりあひてみしやそれともわかぬまに / 紫式部

めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に(めくりあひてみしやそれともわかぬまに) 雲隠れにし夜半の月影(くもかくれにしよはのつきかけ) 紫式部(むらさきしきぶ)
2字決まり

たきのおとはたえてひさしくなりぬれと / 大納言公任

滝の音は絶えて久しくなりぬれど(たきのおとはたえてひさしくなりぬれと) 名こそ流れてなほ聞こえけれ(なこそなかれてなほきこえけれ) 大納言公任(だいなごんきんとう)
2字決まり

たれをかもしるひとにせむたかさこの / 藤原興風

誰をかも知る人にせむ高砂の(たれをかもしるひとにせむたかさこの) 松も昔の友ならなくに(まつもむかしのともならなくに) 藤原興風(ふじわらのおきかぜ)
3字決まり

あまつかせくものかよひちふきとちよ / 僧正遍昭

天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ(あまつかせくものかよひちふきとちよ) 乙女の姿しばしとどめむ(をとめのすかたしはしととめむ) 僧正遍昭(そうじょうへんじょう)
2字決まり

これやこのゆくもかへるもわかれては / 蝉丸

これやこの行くも帰るも別れては(これやこのゆくもかへるもわかれては) 知るも知らぬもあふ坂の関(しるもしらぬもあふさかのせき) 蝉丸(せみまる)
3字決まり

わかいほはみやこのたつみしかそすむ / 喜撰法師

わが庵は都の辰巳しかぞ住む(わかいほはみやこのたつみしかそすむ) 世をうぢ山と人はいふなり(よをうちやまとひとはいふなり) 喜撰法師(きせんほうし)