百人一首
【原 文】あしびきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む
【上の句】あしびきの山鳥の尾のしだり尾の(あしひきのやまとりのをのしたりをの)
【下の句】ながながし夜をひとりかも寝む(なかなかしよをひとりかもねむ)
【決まり字】2字決まり「あし」
超現代語訳
えーっ、マジ寂しい。
こんなにも長い夜を、僕ちゃんひとりで過ごすの?
おとめちゃん(妻:依羅娘子(よさみのおとめ))に、会いたいよー!
歌のポイント
- 2人いるうちの一人目のマロ もう一人は、7番目の安倍仲麿
- 「の」のリズムであしがながいと覚える
- 超愛妻家の歌
- 和歌のレジェンド
- 愛する人に寂しさを訴えるのに、使える「山鳥」
歌の情景
この歌は、宮廷歌人として大活躍していた人麻呂は、各地へ出張も多くその際にとにかく妻に会いたい一心で寂しさを募らせて詠んだ可愛らしい歌です。
夜は別々に寝る習性を持ち、とても長いシッポを持つ山鳥をモチーフに妻への会いたさと夜の寂しさを歌い上げるあたりがとてもイケています。
語意
【あしびきの】山にかかる枕詞
【山鳥】長いシッポが特徴のキジ科の鳥。昼は夫婦で一緒に過ごすが、夜は別々に寝る習性がある
【しだり尾】長いシッポ
【ながながし夜】長い夜
【ひとりかも寝む】ひとりで寝るんだろうな
歌の分類
【歌集】拾遺和歌集
【歌仙】三十六歌仙
【テーマ】恋の歌
【50音】あ音
歌を詠んだ人物
【作者】柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)
【性別】男性歌人
【職業】官人(現代職業:官僚)
【生年】660年頃
【享年】724年(神亀元年3月18日)
柿本人麿は、飛鳥時代に2番目の歌人である持統天皇と文武天皇に使えた人物です。当時は、宮廷歌人と呼ばれる職業があり、柿本人麿も持統天皇の超お気に入り歌人の一人でした。宮廷歌人とは、他よりも優れた知識を持ち、歌を歌い上げるためだけに皇室のさまざなイベントで喜びや悲しみの歌を天皇や皇子への歌を捧げる職業です。
天皇や皇室の方々と行動をともにし歌を歌うことが仕事であったため、日本各地へ出張も多かったようです。詳しいプロフィールは、わかっていませんが、第5代孝昭(こうしょう)天皇の子孫である豪族の春日氏の分家にあたり父は柿本 大庭(かきのもと の おおば)です。仕事で石見の国(現在の島根県)に訪れた際に、現地の姫である依羅娘子(よさみのおとめ)と恋に落ちロマンティックな恋の歌を贈り合い結婚します。
柿本人麿の歌は、枕詞、序詞、押韻が巧みに使われておりエレガントさとオリジナリティが高いと評価されています。また、4番目の歌人・山部赤人と共に優れた歌を歌う二人を合わせて山柿(さんし)と呼ばれ、万葉集に長歌19首、短歌75首がエントリーし、三十六歌仙の一人でもあることから、とっても素晴らしい歌人だったことがわかっています。宮廷歌人でありながら、官位としてはそう高くない人物ですが、日本の和歌を芸術として高めたレジェンドです。