百人一首
【原 文】おほけなく憂き世の民におほふかな わが立つ杣にすみ染の袖
【上の句】おほけなく憂き世の民におほふかな(おほけなくうきよのたみにおほふかな)
【下の句】わが立つ杣にすみ染の袖(わかたつそまにすみそめのそて)
【決まり字】3字決まり「おほけ」
超現代語訳
ねぇみんな~!こんなボクだけど、任せて!あらゆるお悩みから救ってあげちゃうよ。
歌のポイント
- なんとも頼もしい存在で、友だちになりたい人物
- 「おほ わがた」と覚える
- 天変地異と争いの続く時代に、世の人々を救いたい!と願った偉大な人物の歌
歌の情景
この歌は、天変地異や病気、そして源平の戦いなど不穏な空気が漂う時代に、比叡山のお坊さんとなった慈円が、最澄の意志を継ぎ「世の人々救おう!」と決意してくれた頼もしく希望がもてる歌です。「おほけなく」と自分を謙遜している姿にもとっても好感が持てます。
語意
【おほけなく】恐れ多いけど。身のほどにふさわしくないけど。謙遜の意味を表す。
【憂き世の民】この辛い世の中に生きている人。
【おほふかな】墨染の袖を憂き世の民にかぶせる。仏教によって世の人々を救う。
【わが立つ杣】比叡山延暦寺。「杣(そま)」は木を伐採する山をいうが、ここでは最澄の歌によって比叡山延暦寺となる。
【墨染の袖】墨で染めたような真っ黒お坊さんが着る着物。「墨染」と「住み初め」の掛詞。
歌の分類
【歌集】千載和歌集
【歌仙】-
【テーマ】雑の歌
【50音】お音
歌を詠んだ人物
【作者】前大僧正慈円(さきのだいそうじょうじえん)
【性別】男性歌人
【職業】僧侶(現代職業:お坊さん)
【生年】1155年5月17日(久寿2年4月15日)
【享年】1225年10月28日(嘉禄元年9月25日)
前大僧正慈円(さきのだいそうじょうじえん)は、平安時代末期から鎌倉時代初期を生きた天台宗のお坊さんです。76番の歌人で関白・藤原忠通(ふじわらのただみち)の6男として生まれ、13歳で出家しました。また91番の歌人・藤原良経(ふじわらのよしつね)の叔父にあたります。
比叡山に入り、お坊さんのトップである大僧正(だいそうじょう)となり、4回も比叡山延暦寺のトップリーダーを務めました。86番の歌人・西行に和歌を教えてもらい、和歌の世界へデビューしました。
勅撰集に255首収められています。